大和型戦艦の大艦巨砲!スゴイツヨイ!ソノシクミ!


長さ 20m・口径 46cm の巨大な鉄の筒。そこから、長さ 2 m・重さ 1.5 t の鉄と火薬の固まりを火薬の凄まじい爆発で打ち出します。マッハ 3 で飛んでいくその固まりを、距離 30 km 先に居て 時速 50 km/h で動く目標に命中させる。どう考えたって無理な話ですが、なんとしても実現させねばなりません。国家の命運が丸々掛かってるのですから。
そんな無茶苦茶を実現する仕組みの集大成が大和型戦艦でした。

戦艦大和

戦艦大和(1944版)       ⒸAlexpl(2008/08)

人類の歴史が生み出した様々な技術の集大成です。

  • 質の安定した鉄を大量に精製する冶金技術が必要です。巨大な砲身は発射時のとんでもない熱と衝撃に耐えなくてはなりません。
  • 巨大な鉄の固まりを極めて高精度に加工する技術が必要です。砲身にちょっとでも歪みが有ると、打った弾は狙った地点に向かって進みません。
  • 高度な火薬技術が必要です。少量で圧倒的な爆発力を生み出し、しかし邪魔な燃焼煙をなるべく出さずに、かつ普段の保管時は安定してて自然発火したりしない安全な火薬という都合のいいやつです。(それでも自然発火リスクは残るので、弾薬庫はクーラーで冷却されてました)
  • 目標までの距離を測定する光学技術が必要です。艦橋頂上の 15.5 m 測距儀は、巨大で精密な光学望遠鏡。歪みが全く無いように加工された鏡やレンズが高精度で組み合わさったものです。
  • 目標を狙うための複雑な数学が必要です。目標に照準を合わせるにあたっては、単純に目標の距離と方角だけでなく、自艦の速度と進行方向、目標の速度と進行方向、気温や湿度や風速、果ては地球の自転まで計算に入れないとその分容赦なくズレます。まだデジタル機器なんて無い時代ですので、機械式アナログコンピュータという形で実現されました。
  • 射撃台である船を安定させるための造船および操船技術が必要です。射撃に伴い凄まじい反動が砲に掛かりますので、吸収して安定させないとこれまた弾道が狂います。また、巨大な砲は大変重く、艦船全体の設計バランスを一歩間違うと船ごとひっくり返って転覆する危険がありました。(いくつもの悲しい過去実例があります)
  • 目標を索敵するための索敵技術が必要です。目標は大海原のどこにいるか分からないので、アテを付けた後は偵察機で探しまわり、見つけたら位置の報告情報を無線で受け付け、射程内まで巨大な船を高速で動かしてようやっと「射撃」ができるようになります。

(他にも有りますが長くなりすぎますので省略)

ただ、これだけ工夫を凝らしても、どうしても弾着が多少バラつくのは物理的にやむを得ないことでした。なので、「散布界」という概念が導入されます。
実際に試し撃ちを繰り返して性能確認をすることにより「狙った目標地点から大体半径何百メートルの範囲に弾が散らばる」という統計データが取れるます。射撃を繰り返し目標をこの散布界の中に囲みつつ距離を縮めて命中弾を出しましょう。最大射程 42 km の場合、散布界は 1 km 弱ほどです。え、なにそれさすがに無理すぎる。

ということで、実戦で想定していた交戦距離は、20 km ~ 30 km ぐらいが目処とされていたようです。弾数にも砲身寿命にも限りが有るので、命中率とのトレードですね。砲身は一発撃つ度に熱と摩耗で変形していき、200 発ほど撃ったら交換しないといけないです。超巨大な旋盤をグルグル回して削りだして作ってる逸品物でございます、あんまり替えもございませんのでお大事にご利用ください。
射撃の手順詳細は、ちょっと細かくなりますがこんな感じでした。

  1. 司令官とか艦長とかの偉いヒトが、どの目標を狙うか決定。砲撃戦の命令を下す。
  2. 備え付けの観測機を火薬式のカタパルトで打ち出して、予め目標近くまで飛ばす。
  3. 艦橋の一番高いところに設置された「方位盤射撃指揮所」という、コントロール用のハンドルが沢山備え付けられた集中管理システムにて射撃管理。
  4. 動揺手」という役割の人が望遠鏡を見て目標との水平をあわせる。(ハンドルをキュッキュッ回す)
  5. 旋回手」という役割の人が望遠鏡を見て目標との左右をあわせる。(ハンドルをキュッキュッ回すと機械式計算機を通して各主砲の中の人に指示が飛ぶ。主砲の中の人は指示に合うように砲塔の回して砲を上に持ち上げる)
  6. 射手」という役割の人が望遠鏡を見て目標との上下をあわせる。(同上)
    (4~6と平行して、15.5 m 測距儀を目標のほうに向けて三角測量を行い、目標の正確な距離やら速度やら、風力・気温やら多数の情報を機械式計算機に打ち込んでデータ補正を掛ける)
  7. 砲術長」という役割の人が狙いが合ってるのを確認して、射撃警告のブザーを鳴らして甲板上の人員を退避させる。
  8. 砲術長」が射撃命令。
  9. 射手」がトリガーをひいて発射。(主砲は 3 連だけど、衝撃分散して命中率を上げるためにわざとほんの少しずつタイミングずらして別個に撃つ)
  10. 発射した弾が 20~30 km 先の目標地点に到達するまで約 1 分間ほど。砲塔は次弾装填の準備作業を実施。
  11. 水平線に水柱が小さく上がるのが見える。目標上空の観測機が、無線で弾着結果を報告。手前に落ちたのか奥に外れたのか。
  12. 弾着報告を元に4に戻って誤差を修正する。
    (弾が敵艦に直撃命中した場合は、鉄の固まりの運動エネルギーにより装甲を突き破ったあと、時限式の信管で1分以内に艦内で大爆発です)

細かいですね。この一連の照準作業に、方位盤射撃指揮所の中の人、測距儀の中の人、機械式計算機の中の人、各主砲の中の人、合わせて数十人が必要とかそういう。3 連装主砲塔を 3 基同時に中央制御で集中射撃することによる命中率アップの恩恵を受けるために必要な人手でした。
時間間隔は割とのんびりですが、相手の弾のクリーンヒットが先に当たればこちらも一撃死です。波間で絶えず揺れる艦の中での照準作業たるや、緊張感も相当なものでしょう。

方位盤射撃指揮所が直撃喰らったらどうしましょう? メインは前部艦橋にありましたが、予備で後部艦橋にも有りました。そっちもダメなら、砲塔単体で個別に測距して射撃を行うこともできるようになってます。砲塔に付いてる耳の部分です。命中率は当然ダダ下がりになりますので最後の最後の手段です。

武蔵艦橋

艦橋最上部に、方位盤射撃指揮所がある。耳の部分が 15.5 mの巨大測距儀。

レーダーなんかもすでに有りましたが、まだ性能が低く雨雲や島と艦隊の区別が難しかったりしてあまりアテになるものではありませんでした。(アメリカ様?もちろん技術研究に多くのリソースを突っ込んで性能を高めて有効に利用してらっしゃいます。それでもなお性能は十分では無かったようですが)

これだけ技術の粋を凝らした上に乗員が猛訓練を重ねても、遠距離戦だと 1 発を当てるのすらほんとに難しいことでした。
重巡洋艦の事例だと、撃った弾の命中率は演習時で 5 % ほど。20 発打てば 1 発はヒットする計算ですが、実戦時では 0.1% とか厳しい感じ。
相手の行動が複雑だったり煙幕張られたり天候が悪かったり波が高かったりでそう都合良くはいかないものです。

逆に一番交戦距離が近いパターンだと、距離 3 km とかで日米艦隊が撃ち合ったこともありました(第三次ソロモン海戦)。日本艦隊の攻撃が米艦隊の旗艦艦橋にヒットして司令部全滅し、すんごい混乱状態になった夜戦です。この至近距離だと流石に、霧島に命中 50 発、サウス・ダゴダに命中 42 発とか、酷い状況だったようです。

大和型超弩級戦艦、大和・武蔵の2隻。技術の粋を凝らしたその巨大主砲の戦果はほぼゼロでした。歴史を結果論だけで語ってはいけないですが、切ないですね。
生み出され培われた無数の技術は、その後の戦後復興期において様々な所で活かされるのが慰みでしょう。

 


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